◀前 【16.季氏:第12】 次▶〔誠不以富。亦祇以異。〕 齊景公有馬千駟。死之日。民無徳而称焉。伯夷叔齊。餓于首陽之下。民到于今称之。其斯之謂與。
〔誠に富を以てせず、亦た祇だ異を以てす。〕 斉の景公には馬千駟有り。死するの日、民徳として称する無し。伯夷・叔斉は首陽の下に餓う。民今に到るまで之を称す。其れ斯の謂いか。
先師がいわれた。――
「斉の景公は馬四千頭を養っていたほど富んでいたが、その死にあたって、人民はだれ一人としてその徳をたたえるものがなかった。伯夷叔斉は首陽山のふもとで飢え死にしたが、人民は今にいたるまでその徳をたたえている。詩経に、
黄金も玉も何かせん
心ばえこそ尊けれ。
とあるが、そういうことをいったものであろう」(下村湖人『現代訳論語』)