大学入試① よくわかる
ネット出願急拡大
 大学の入学試験が変わりつつある。東京大学が推薦入試を始めるほか、大学入試センター試験に代わる新テストの導入も検討されている。大学に進学する可能性のある18歳人口は2018年から滅る見込みで、大学の経営環境は厳しさを増す。各大学は学生獲得のため教育内容の拡充やキャンパスの都心回帰だけでなく、入試制度の改革にも力を入れている。
 入試にかかわる手続きをインターネット経田でできる「ネット出願」が急速に広がっている。すでに3割超の私立大学が利用しているとされ、国立大学も広島大学が15年度入試に導入した。
 胃山学院大学が16年度から一般人試などに取り入れると決めるなど、ネット出願を活用する大学はさらに増えそうだ。
 紙の出願書類に記入して郵送する従来の手続きに比べ、ネット出願は受験生にとっても大学にとっても利便性が高い。受験生は願書を取りよせる必要がなく、記入ミスに気づいてもすぐに書き直せるため、訂正印を押すなどの手間をかけなくてすむ。大学も仕分けなどの作業が大幅に減る。
 大学はネット出願の利点を生かし、より多くの学生に受験してもらおうと知恵を絞る。大東文化大学は15年度の一般方式入試で、ネット出願を試験日の最短2日前まで受け付けた。願書を郵送する従来の手続きよりも3~6日遅く、約200人が郵送を締め切った後に出願したという。
 作業が減ったことで試験日直前まで受け付けられるようになった。世帯所得の僚び悩みを受け、学費が相対的に安い国公立大学を志望する受験生は多い。大東文化大学の担当者は「センター試験の結果を見て『私立大学も受けた方がいいかな』と考える学生に受験の機会をぎりぎりまで与えたい」と説明する。
 ネット出願に完全移行する大学もある。近畿大学は14年度入試から紙の願瞥を廃止した。14年度の志願者数は10万人を超え、明治大学や早稲田大学などを上回り全国1位になった。積極的な広報活動に加え、ネット出願への完全移行もその一因とみられている。
 大学は「2018年間題」を抱える。ここ数年の18歳人口は120万人前後で推移してきたが、18年から再び滅少傾向が鮮明になる。25年には109万人と直近のピークだった1992年(205万人)のおよそ半分に落ちこむ見通しだ。
 市場が縮小するなか、大学は生き残りをかけて学生をより多く集めようと躍起になっている。入り口となる入試制度の魅力向上も欠かせない。
 遠藤邦生、黒井将人、森国司、池田将、広沢まゆみが担当します。
《出典》日経産業新聞 (27/09/07) 前頁      次頁