発信箱 「ねじれ」
論説室 福本 容子
「いくじがない。未練がましい」(広辞苑)。「難局に身を挺して立ち向かう勇気に乏しくて、危険や困難に出会うとすぐくじけてしまう様子」(新明解国語辞典)
「女々しい」の定義だ。くよくよするのは女、を前提にしているから普通、男に向けて言う。少なくとも平安時代からあるらしい。でもこの前提、もう賞味期限かな。
「このままでは1~2年でギリシャになつちゃう」と言って消費税増税を訴えた菅直人首相。年度内の具体化を約束した。それが選挙で負けた途端、「3月はなかなか大変」「期限にとらわれず時間をかけて議論しょう」と政権幹部が次々、くじけ出した。急がないとギリシャ、のはずだけど。
「女々しい」の反対は「雄々しい」。で、民主党の誰が雄々しいかと見渡せば、際立つのが蓮舫さんだ。事業仕分けのやり方が乱暴だとかいろいろ批判も浴びたけど、くじけない。選挙敗北で周囲が一斉に菅さんの消費税発言を責め始めると、鳩山さんや小沢さんにも原因がある、ときっぱり。
男女がねじれた。そのうち「女々しい」が「勇気ある男」へのほめ言葉に、「雄々しい」が軟弱な女への軽蔑になるのかも。
ねじれといえば、「ねじれ国会」にも違和感がある。二つの院が別の時期に選挙をすれば、違う党が勝利、は政権交代時代なら当たり前。ねじれず一足飛びに、すっきり政権交代は無理だ。ねじれ=問題は1党支配時代の発想が抜けないからでは?
確かに楽じゃないけれど、どの党とどんな妥協をして法律ができていくのか見える方が、国民にはありがたい。うまくいけば1党だけの知恵よりいいものができる。というより、それを目指さないと。
さて、ねじれてない国会の呼び名は何になるのだろう。単純国会、楽々国会、カーボンコピー国会……。2010.7.16
《出典》毎日新聞 (22/07/16) 前頁      次頁