民家で熟した古材に新人生
再利用へ展示ギャラリー開設
 古い民家の廃材を解体業者から引き取り、建材として生かそうと、今秋、山梨県塩山市の建設会社が古材ギャラリーをオープンする。最近、東京周辺では民家の廃材を住宅などに再利用する需要が高まっている。同社の社長は「古材の魅力は、ワインと同様に木が熟成した時間を味わえることではないか」と話す。ほかの業者とも連携し、古材を流通させる全国的なシステムづくりをめさしている。
 この建設会社は塩山市上於曽の「伝匠舎・石川工務所」(石川重人社長)。現代建築のほかに、社寺・文化財建築工事や古い民家の再生工事、水車小屋再建などを手掛けてきた。 普通の古い民家の再生や有効利用をめざし、建築家や設計士、工務店経営者らが会員となって1997年9月に発足した「日本民家再生リサイクル協会」(本部・東京)の指定業者第1号でもある。
 約500平方㍍の敷地に、古材を再生する工場と、古材を展示するギャラリーが仮オープンした。クリやケヤキ、松などの柱やはり、板などが並ぶ。総ケヤキの階段まであり、古びた木材が磨き上げられて、黒光りした建材によみがえる。
 「100年以上、いろりの煙を受け、薫製と同じ状態になったのでしよう。磨いてみると、本当にきれいで驚いた。古材が持つ美を発見した喜びがあった」と石川社長(43)は話す。古材のあちこちに職人の手仕事の跡も残る。住宅などに再利用されるが、この2ヵ月ほどで約100万円の売り上げがあったという。
 古材は解体業者から有償で引き取って加工し、同じ種類の新材よりやや安い値札をつける。解体業者にとっても、廃材を再利用材として生かせれば、処分費用が浮く上、利益も得られる。
 今後、関東などのほかの業者らと連携して、「古材情報」を交換する流通ネットワークづくりを進め、将来はインターネットを通じて全国の古材情報の交換もめざしている。
《出典》朝日新聞 (11/08/26) 前頁      次頁