「広い敷地に大きな家」
欧州式住宅に理想像求める
庭のハスが葉を伸ばす季節となった。鉢が小さいので、近くの園芸センターへ買いにいった。とても込んでいる。
欧州の庭園に置くような噴水まで売っている。結局、ギリシャ風の大きめの鉢を買って帰った。

住宅ローンを組むのは、未来への安心感がないと難しい。失業率四%台が間近となると、家を買う人は減らざるを得ない。しかし、住まいに対する意識の向上は著しい。

博報堂生活総合研究所が実施した「ドリーム・ハウス調査」によれば、住まいへの夢は大きくなっている。昨年末、百二十人の男女(二十代から五十代)にクレヨンを渡して「理想の家」を描いてもらった。

十年前に行った同様の調査のときは、「イメージが広がらないので、クレヨンでなく鉛筆でもいいですか」という回答者が少なくなかった。玄関の靴箱を大きく描いて、「家族全部の靴が入るようにしたい」といったつつましい夢を描く人もいた。

今回は全く違う。住まいを見る目が肥えたのだろう。最大の変化は、広い敷地に大きな家を描いた人が増えたことだ。様式も明確で、英仏の郊外にありそうな純粋な欧州式である。緑豊かな庭を描いた人も多かった。
特に、中年以上の女性の場合は、山の別荘のように、大木や林を書き込んでいる人が多い。ガーデニングの流行も納得がいく。

心理学の描画診断法によると、家の絵を描くとき、木は「人の発達意欲」を象徴する。大きな木は、彼女たち自己実現欲求の強さを表してもいるのだ。

前回調査でも、大きなガラス面を持つ家を描く人は多かったが、今回も同様だった。ガラスの多用はかつて行なった欧州での調査では見られなかった現象だ。また、今回は絵の中にわざわさ耐震構造と明記する人が見られた。

夢さえあれは、客観条件が整うにつれていずれ人はそちらに向かう。
求められるのは未来への夢づくりである。いうまでもなく、政治でも経済でも、ビジョン構築力がすべてに先行するのだ。
《出典》日経産業新聞 (10/05/11) 前頁      次頁