◀前 【19.子張:第23】 次▶叔孫武叔。語大夫於朝曰。子貢賢於仲尼。子服景伯以告子貢。子貢曰。譬之宮牆。賜之牆也及肩。闚見室家之好。夫子之牆數仞。不得其門而入。不見宗廟之美。百官之富。得其門者或寡矣。夫子之云。不亦宜乎。
叔孫武叔、大夫に朝に語りて曰く、子貢は仲尼より賢れり。子服景伯、以て子貢に告ぐ。子貢曰く、之を宮牆に譬うれば、賜の牆や肩に及ぶ。室家の好きを闚い見る。夫子の牆は数仞なり。其の門を得て入らざれば、宗廟の美、百官の富を見ず。其の門を得る者或いは寡なし。夫子の云えること、亦た宜ならずや。
叔孫武叔が朝廷で諸大夫に向っていった。――
「子貢は仲尼以上の人物だと思います」
子服景伯がそのことを子貢に話した。すると子貢はいった。――
「とんでもないことです。これを宮殿の塀にたとえてみますと、私の塀は肩ぐらいの高さで、人はその上から建物や室内のよさがのぞけますが、先生の塀は何丈という高さですから、門をさがしあてて中にはいってみないと、御霊屋の美しさや、文武百官の盛んなよそおいを見ることができないのです。しかし、考えてみると、その門をさがしあてるのが容易ではありませんので、大夫がそんなふうにいわれるのも、あるいは無理のないことかもしれません」(下村湖人『現代訳論語』)