◀前 【18.微子:第08】 次▶逸民。伯夷。叔齊。虞仲。夷逸。朱張。柳下惠。少連。子曰。不降其志。不辱其身。伯夷叔齊與。謂柳下惠少連。降志辱身矣。言中倫。行中慮。其斯而已矣。謂虞仲夷逸。隠居放言。身中清。廢中權。我則異於是。無可無不可。
逸民には、伯夷・叔斉・虞仲・夷逸・朱張・柳下恵・少連あり。子曰く、其の志を降さず、其の身を辱しめざるは、伯夷・叔斉か。柳下恵・少連を謂う。志を降し身を辱しむるも、言は倫に中り、行いは慮に中る。其れ斯のみ。虞仲・夷逸を謂う。隠居して放言し、身は清に中り、廃は権に中る。我は則ち是に異なり。可も無く、不可も無し。
古来、野の賢者として名高いのは、伯夷・叔斉・虞仲・夷逸・朱張・柳下恵・少連などであるが、先師はいわれた。
「あくまでも志を曲げず、身を辱かしめなかったのは、伯夷と叔斉であろう」
柳下恵と少連とについては、つぎのようにいわれた。――
「志をまげ、身を辱しめて仕えたこともあったが、いうことはあくまでも人倫の道にかなっていたし、行動にも筋道が立っていた。二人はその点だけで、十分立派だ」
虞仲と夷逸については、つぎのようにいわれた。――
「隠遁して無遠慮な放言ばかりしていたが、しかし一身を守ることは清かったし、世を捨てたのは時宜に適した道だったと言えるだろう」
先師は、それにつけ加えてさらにいわれた。――
「私は、しかし、こうした人たちとはちがう。私は、はじめから隠遁がいいとかわるいとかを決めてかかるような、片意地な態度には出たくないのだ」(下村湖人『現代訳論語』)