◀前 【18.微子:第05】 次▶楚狂接輿。歌而過孔子曰。鳳兮鳳兮。何德之衰。往者不可諫。來者猶可追。已而已而。今之從政者殆而。孔子下欲與之言。趨而辟之。不得與之言。
楚の狂接輿、歌いて孔子を過ぎて曰く、鳳や鳳や、何ぞ徳の衰えたる。往く者は諫むべからず、来る者は猶お追うべし。已みなん、已みなん。今の政に従う者は殆し。孔子下りて之と言わんと欲す。趨りて之を辟け、之と言うを得ざりき。
楚の国で、狂人をよそおっていた接輿という人が、先師の車のそばを通り過ぎながら、歌った。――
「鳳凰よ、鳳凰よ、
神通力は、どうしたか。
すんだことなら仕方がない。
これから先はしっかりせい。
国の舵取りゃあぶないぞ。
やめたらどうぞい。やめたらぞい」
先師は車をおりて、接輿と話をしようとされた。しかし、接輿が大急ぎでどこかにかくれてしまったので、お話しになることができなかった。(下村湖人『現代訳論語』)