◀前 【18.微子:第02】 次▶
柳下惠爲士師。三黜。人曰。子未可以去乎。曰。直道而事人。焉往而不三黜。枉道而事人。何必去父母之邦。
りゅうけい士師ししりて、たびしりぞけらる。ひといわく、いまもっるべからざるか。いわく、みちなおくしてひとつかうれば、いずくくとしてたびしりぞけられざらんや。みちげてひとつかうれば、なんかならずしも父母ふぼくにらん。
柳下恵が法官となって三たびその職を免ぜられた。ある人が彼にいった。――
「どうしてこんな国にぐずぐずしておいでです。さっさとお去りになったらいいでしょうに」
柳下恵がこたえた。――
「どこの国に行ったところで、正道をふんでご奉公をしようとすれば、三度ぐらいの免職は覚悟しなければなりますまい。免職がおそろしさに正道をまげてご奉公するぐらいなら、何も父母の国をすてて、わざわざ他国に行く必要もなかろうではありませんか」(下村湖人『現代訳論語』)