◀前 【17.陽貨:第08】 次▶子曰。由也。女聞六言六蔽矣乎。對曰。未也。居。吾語女。好仁不好學。其蔽也愚。好知不好學。其蔽也蕩。好信不好學。其蔽也賊。好直不好學。其蔽也絞。好勇不好學。其蔽也亂。好剛不好學。其蔽也狂。
子曰く、由や、女六言六蔽を聞けるか。対えて曰く、未だし。居れ、吾女に語らん。仁を好みて学を好まざれば、其の蔽や愚。知を好みて学を好まざれば、其の蔽や蕩。信を好みて学を好まざれば、其の蔽や賊。直を好みて学を好まざれば、其の蔽や絞。勇を好みて学を好まざれば、其の蔽や乱。剛を好みて学を好まざれば、其の蔽や狂なり。
先師がいわれた。――
「由よ、お前は六つの善言に六つの暗い影があるということをきいたことがあるか」
子路がこたえた。――
「まだきいたことがございません」
先師――
「では、おかけなさい。話してあげよう。仁を好んで学問を好まないと、見さかいのない痴愚の愛におちいりがちなものだ。知を好んで学問を好まないと、筋道の立たない妄想をたくましゅうしがちなものだ。信を好んで学問を好まないと、小信にこだわって自他の幸福を害しがちなものだ。直を好んで学問を好まないと、杓子定規になり、無情非礼をあえてしがちなものだ。勇を好んで学問を好まないと、血気にはやって秩序をみだしがちなものだ。剛を好んで学問を好まないと、理非をわきまえない狂気じみた自己主張をやりがちなものだ」(下村湖人『現代訳論語』)