◀前 【17.陽貨:第04】 次▶子之武城。聞弦歌之聲。夫子莞爾而笑曰。割雞焉用牛刀。子游對曰。昔者偃也。聞諸夫子。曰。君子學道則愛人。小人學道則易使也。子曰。二三子。偃之言是也。前言戲之耳。
子、武城に之き、絃歌の声を聞く。夫子莞爾として笑いて曰く、鶏を割くに、焉んぞ牛刀を用いん。子游対えて曰く、昔者偃や、諸を夫子に聞く。曰く、君子道を学べば則ち人を愛し、小人道を学べば則ち使い易し、と。子曰く、二三子、偃の言是なり。前言は之に戯れしのみ。
先師が武城に行かれた時、町の家々から弦歌の声がきこえていた。先師はにこにこしながらいわれた。――
「雞を料理するのに、牛刀を使う必要もないだろうにな」
武城は門人子游がその代官をつとめ、礼楽を盛んにして人民を善導し、治績をあげていた小さな町であった。
で、子游は先師にそういわれると、けげんそうな顔をしていった。――
「以前私は、先生に、上に立つ者が道を学ぶとよく人を愛し、民衆が道を学ぶとよく治まる、とうけたまわりましたが……」
すると、先師は、お伴をしていたほかの門人たちをかえりみて、いわれた。――
「今、偃がいったことはほんとうだ。私のさっきいったのは、じょうだんだよ」(下村湖人『現代訳論語』)