◀前 【17.陽貨:第01】 次▶
陽貨欲見孔子。孔子不見。歸孔子豚。孔子時其亡也。而往拝之。遇諸塗。謂孔子曰。來。予與爾言。曰懷其寳而迷其邦。可謂仁乎。曰不可。好從事而亟失時。可謂知乎。曰不可。日月逝矣。歳不我與。孔子曰。諾。吾將仕矣。
ようこうんとほっす。こうまみえず。こういのこおくる。こうきをときとしてきてこれはいす。これみちう。こういていわく、きたれ、われなんじわん。たからいだきてくにまよわすは、じんうべきかと。いわく、不可ふかなりと。ことしたがうをこのみて亟〻しばしばときうしなうはうべきかと。いわく、不可ふかなりと。日月じつげつく。としわれともにせず。こうのたまわく、だくわれまさつかえんとすと。
魯の大夫ようが先師を引見しようとしたが、先師は応じられなかった。そこで陽貨は先師に豚肉の進物をした。先師は陽貨の留守を見はからってお礼に行かれた。ところが、運わるく、その帰り途で陽貨に出会われた。すると陽貨はいった。――
「まあ、私のうちにおいでなさい。話があるから」
先師が仕方なしについて行かれると、陽貨がいった。――
「胸中に宝を抱きながら、国家の混迷を傍観している人を、果たして仁者といえましょうか」
先師――
「いえません」
陽貨――
「国事に挺身したい希望を持ちながら、しばしばその機会を失う人を、果たして知者といえましょうか」
先師――
「いえません」
陽貨――
つきは流れ、歳は人を待ってはくれないものですが……」
先師――
「よくわかりました。いずれそのうちには、私もご奉公することにいたしましょう」(下村湖人『現代訳論語』)