◀前 【16.季氏:第02】 次▶孔子曰。天下有道。則禮樂征伐。自天子出。天下無道。則禮樂征伐。自諸侯出。自諸侯出。蓋十丗希不失矣。自大夫出。五丗希不失矣。陪臣執國命。三丗希不失矣。天下有道。則政不在大夫。天下有道。則庶人不議。
孔子曰く、天下に道有れば、則ち礼楽征伐天子より出ず。天下に道無ければ、則ち礼楽征伐諸侯より出ず。諸侯より出ずれば、蓋し十世にして失わざること希なり。大夫より出ずれば、五世にして失わざること希なり。陪臣国命を執れば、三世にして失わざること希なり。天下に道有れば、則ち政大夫に在らず。天下に道有れば、則ち庶人議せず。
先師がいわれた。――
「先師がいわれた。天下に道が行なわれている時には、文武の政令がすべて天子から出る。天下に道が行なわれていない時には、文武の政令が諸侯から出る。政令が諸侯から出るようになれば、おそらくその政権が十代とつづくことはまれであろう。政令が大夫から出るようになれば、五代とつづくことはまれであろう。さらに陪臣が国政の実権を握るようになれば、三代とつづくことはまれであろう。天下に道が行なわれておれば、政権が大夫の手にうつるようなことはない。天下に道が行なわれておれば、庶民が政治を論議することもない」(下村湖人『現代訳論語』)