◀前 【15.衛霊公:第05】 次▶子張問行。子曰。言忠信。行篤敬。雖蠻貊之邦行矣。言不忠信。行不篤敬。雖州里。行乎哉。立則見其參於前也。在輿則見其倚於衡也。夫然後行。子張書諸紳。
子張行われんことを問う。子曰く、言忠信、行篤敬ならば、蛮貊の邦と雖も行われん。言忠信ならず、行篤敬ならずんば、州里と雖も行われんや。立てば則ち其の前に参わるを見るなり。輿に在りては則ち其の衡に倚るを見るなり。夫れ然る後に行われん。子張諸を紳に書す。
子張が、どうしたら自分の意志が社会に受けいれられ、実現されるか、ということについてたずねた。先師がこたえられた。――
「言葉が忠信であり、行いが篤敬であるならば、野蛮国においても思い通りのことが行なわれるであろうし、もしそうでなければ、自分の郷里においても何ひとつ行なわれるものではない。忠信篤敬の四字が、立っている時には眼のまえにちらつき、車に腰をおろしている時には、ながえの先の横木に、ぶらさがって見えるというぐらいに、片時もそれを忘れないようになって、はじめて自分の意志を社会に実現することができるのだ」
子張はこの四字を紳に書きつけて守りとした。(下村湖人『現代訳論語』)