◀前 【14.憲問:第47】 次▶
闕黨童子將命。或問之曰。益者與。子曰。吾見其居於位也。見其與先生並行也。非求益者也。欲速成者也。
闕党けっとうどうめいおこなう。あるひとこれいていわく、えきするものか。のたまわく、われくらいるをる。先生せんせいならくをる。えきもとむるものあらざるなり。すみやかにらんとほっするものなり。
けつという村の出身だった一少年が、先師の家で取次役をさせられていた。そこである人が、先師にたずねた。――
「あの少年もよほど学問が上達したと見えますね」
先師はこたえられた。――
「いやそうではありません。私はあの少年がおとなの坐る席に坐っていたのを見ましたし、また先輩と肩をならべて歩くのを見ました。あの少年は学問の上達を求めているのでなく、早くおとなになりたがっているのです。それで実は取次でもやらして、仕込んでみたいと存じまして……」(下村湖人『現代訳論語』)