◀前 【14.憲問:第17】 次▶子路曰。桓公殺公子糾。召忽死之。管仲不死。曰。未仁乎。子曰。桓公九合諸侯。不以兵車。管仲之力也。如其仁。如其仁。
子路曰く、桓公、公子糾を殺す。召忽は之に死し、管仲は死せず。曰く、未だ仁ならざるかと。子曰く、桓公、諸侯を九合し、兵車を以てせざるは、管仲の力なり。其の仁に如かんや、其の仁に如かんや。
子路がいった。――
「斉の桓公が公子糾を殺した時、召忽は公子糾に殉じて自殺しましたのに、管仲は生き永らえてかえって桓公の政をたすけました。こういう人は仁者とはいえないのではありますまいか」
先師がこたえられた。――
「桓公が武力を用いないで諸侯の連盟に成功し、夷狄の難から中国を救い得たのは、全く管仲の力だ。それを思うと、管仲ほどの仁者はめったにあるものではない。めったにあるものではない」(下村湖人『現代訳論語』)