◀前 【14.憲問:第13】 次▶子路問成人。子曰。若臧武仲之知。公綽之不欲。卞莊子之勇。冉求之藝。文之以禮樂。亦可以爲成人矣。曰。今之成人者。何必然。見利思義。見危授命。久要不忘平生之言。亦可以爲成人矣。
子路、成人を問う。子曰く、臧武仲の知、公綽の不欲、卞荘子の勇、冉求の芸のごとき、之を文るに礼楽を以てせば、亦た以て成人と為すべし。曰く、今の成人なる者は何ぞ必ずしも然らん。利を見ては義を思い、危きを見ては命を授け、久要に平生の言を忘れざれば、亦た以て成人と為すべし。
子路が「成人」の資格についてたずねた。先師がいわれた。――
「臧武仲の知、公綽の無欲、卞荘子の勇気、冉求の多芸をかね、さらに礼楽をもって磨きをかけたら、成人といってもいいだろう」
さらにいわれた。――
「しかし、今のような乱世では、そこまでは望めまい。利得の問題では道義を考え、国家の危急にのぞんでは身命をなげうち、古い約束や、平常の誓いを忘れずに実行する、というような人であったら、今ではまずまず成人といえるだろう」(下村湖人『現代訳論語』)