◀前 【14.憲問:第10】 次▶或問子産。子曰。惠人也。問子西。曰。彼哉彼哉。問管仲。曰。人也。奪伯氏駢邑三百。飯疏食。没齒無怨言。
或ひと子産を問う。子曰く、恵人なり。子西を問う。曰く、彼をや、彼をや。管仲を問う。曰く、(この)人や。伯氏の駢邑三百を奪う。疏食を飯い、歯を没するまで怨言無かりき。
ある人が鄭の大夫子産の人物についてたずねた。先師がこたえられた。――
「めぐみ深い人だ」
楚の大夫子西の人物についてたずねた。先師がこたえられた。――
「あの人か、あの人は」
斉の大夫管仲の人物についてたずねた。先師がこたえられた。――
「人物だね。あの人は大夫伯氏の罪をただして、その領地であった駢邑三百里を没収したが、当の伯氏は、その後やっとかゆをすするほどの困りかたであったにもかかわらず、死ぬまであの人に対して怨みごとをいわなかったというのだから、大したものだ」(下村湖人『現代訳論語』)