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南宮适。問於孔子曰。羿善射。奡盪舟。倶不得其死然。禹稷躬稼而有天下。夫子不答。南宮适出。子曰。君子哉若人。尚徳哉若人。
なんきゅうかつこういていわく、羿げいしゃくし、ごうふねうごかす。ともしかるをず。しょくみずからしててんたもつと。ふうこたえず。なんきゅうかつず。のたまわく、くんなるかなかくのごとひととくたっとぶかなかくのごとひと
なんぐうかつが先師にたずねていった。――
羿げいは弓の名手であり、ごうは大船をゆり動かすほどの大力でありましたが、いずれも非業ひごうの最期をとげました。しかるに、しょくとはみずから耕作に従事して、ついに天子の位にのぼりました。これについての先生のご感想を承りたいと存じます」
先師はこたえられなかった。しかし、南宮适がその場を去ると、いわれた。
「あのような人こそ、まことの君子だ。あのような人こそ、まことに徳を尊ぶ人だ」(下村湖人『現代訳論語』)