◀前 【13.子路:第20】 次▶子貢問曰。何如斯可謂之士矣。子曰。行己有恥。使於四方。不辱君命。可謂士矣。曰。敢問其次。曰。宗族稱孝焉。郷黨稱弟焉。曰。敢問其次。曰。言必信。行必果。硜硜然小人也。抑亦可以爲次矣。曰。今之從政者何如。子曰。噫。斗筲之人。何足算也。
子貢問いて曰く、何如なれば斯れ之を士と謂うべきか。子曰く、己を行うに恥有り。四方に使いして君命を辱しめざるを、士と謂うべし。曰く、敢えて其の次を問う。曰く、宗族は孝を称し、郷党は弟を称す。曰く、敢えて其の次を問う。曰く、言うこと必ず信、行うこと必ず果、硜硜然として小人なるかな。抑亦た以て次と為すべし。曰く、今の政に従う者は何如。子曰く、噫、斗筲の人、何ぞ算うるに足らんや。
子貢がたずねた。――
「士たる者の資格についておうかがいいたしたいと存じます」
先師がこたえられた。――
「自分の行動について恥を知り責任を負い、使節となって外国に赴いたら君命を辱しめない、というほどの人であったら、士といえるだろう」
子貢がまたたずねた。――
「もう一段さがったところで申しますと?」
先師――
「一家親族から孝行者だとほめられ、土地の人から兄弟の情誼に厚いと評判されるような人だろう」
子貢――
「さらにもう一段さがったところで申しますと?」
先師――
「口に出したことは必ず実行する、やり出したことはあくまでやりとげる、といったような人は、石ころみたようにこちこちしていて、融通がきかないところがあり、人物の型は小さいが、それでも第三流ぐらいのねうちはあるだろう」
子貢が最後にたずねた。――
「現在政務に当っている人たちをご覧になって、どうお考えになりますか」
すると先師はこたえられた。――
「だめ、だめ。桝ではかるような小人物ばかりで、まるで問題にはならない」(下村湖人『現代訳論語』)