◀前 【12.顔淵:第19】 次▶季康子問政於孔子曰。如殺無道。以就有道。何如。孔子對曰。子爲政。焉用殺。子欲善而民善矣。君子之德風。小人之德草。草上之風必偃。
季康子、政を孔子に問いて曰く、如し無道を殺して、以て有道を就かば、何如。孔子対えて曰く、子、政を為すに、焉んぞ殺を用いん。子善を欲すれば民善なり。君子の徳は風なり、小人の徳は草なり。草之に風を上うれば必ず偃す。
季康子が政治について先師にたずねていった。――
「もし無道な者を殺して有道な者を保護するようにしたらいかがでしょう」
先師がこたえられた。
「政治を行なうのに人を殺す必要がどこにありましょう。あなたが、もし真に善をお望みであれば、人民はおのずから善に向います。為政者と人民との関係は風と草との関係のようなもので、風が吹けば草は必ずその方向になびくものでございます」(下村湖人『現代訳論語』)