◀前 【12.顔淵:第07】 次▶
子貢問政。子曰。足食。足兵。民信之矣。子貢曰。必不得已而去。於斯三者何先。曰。去兵。子貢曰。必不得已而去。於斯二者何先。曰。去食。自古皆有死。民無信不立。
こうまつりごとう。のたまわく、しょくらし、へいらし、たみこれしんず。こういわく、かならむをずしてらば、三者さんしゃいてなにをかさきにせん。いわく、へいらん。こういわく、かならむをずしてらば、しゃいてなにをかさきにせん。いわく、しょくらん。いにしえよりみなり、たみしんくんばたず。
子貢が政治の要諦についてたずねた。先師はこたえられた。――
「食糧をゆたかにして国庫の充実をはかること、軍備を完成すること、国民をして政治を信頼せしめること、この三つであろう」
子貢がさらにたずねた。――
「その三つのうち、やむなくいずれか一つを断念しなければならないとしますと、まずどれをやめたらよろしゅうございましょうか」
先師――
「むろん軍備だ」
子貢がさらにたずねた。
「あとの二つのうち、やむなくその一つを断念しなければならないとしますと?」
先師――
「食糧だ。国庫が窮乏しては為政者が困るだろうが、昔から人間は早晩死ぬものときまっている。国民に信を失うぐらいなら、飢えて死ぬ方がいいのだ。信がなくては、政治の根本が立たないのだから」(下村湖人『現代訳論語』)