◀前 【11.先進:第07】 次▶
顏淵死。顏路請子之車。以爲之椁。子曰。才不才。亦各言其子也。鯉也死。有棺而無椁。吾不徒行以爲之椁。以吾從大夫之後。不可徒行也。
顔淵がんえんす。がんくるまもっこれかくつくらんとう。のたまわく、さいさいも、各〻おのおのうなり。せしとき、かんりてかくし。われこうしてもっこれかくつくらざりしは、われたいしりえしたがい、こうすべからざるをもってなり。
顔淵が死んだ。父のがんは彼のために外棺そとがんを造ってやりたいと思ったが、貧しくて意に任せなかった。そこで先師に願った。――
「先生のお車をいただけますれば、それを金にかえて、外棺を作ってやりたいと存じますが……」
すると先師はいわれた。――
「才能があろうとなかろうと、子の可愛いさは同じだ。私も子供のが死んだ時には、せめて外棺ぐらい作ってやりたい気がしないでもなかった。しかしついに内棺だけですますことにしたのだ。私がその時、徒歩する覚悟にさえなれば、車を売って外棺を作ってやることもできただろう。しかし、私があえてそれをしなかったのは、私も大夫の末席につらなっているので、職掌がら、徒歩するわけにいかなかったからなのだ」(下村湖人『現代訳論語』)