◀前 【10.郷党:第08】 次▶食不厭精。膾不厭細。食饐而餲。魚餒而肉敗不食。色惡不食。臭惡不食。失飪不食。不時不食。割不正不食。不得其醬不食。肉雖多。不使勝食氣。唯酒無量。不及亂。沽酒市脯不食。不撤薑食。不多食。祭於公。不宿肉。祭肉不出三日。出三日。不食之矣。食不語。寢不言。雖蔬食菜羮瓜。祭必齊如也。
食は精なるを厭わず、膾は細きを厭わず。食の饐して餲し、魚の餒して肉の敗れたるは食らわず。色の悪しきは食らわず、臭いの悪しきは食らわず、飪を失えるは食らわず。時ならざるは食らわず。割ること正しからざれば食らわず。其の醤を得ざれば食らわず。肉は多しと雖も、食気に勝たしめず。唯だ酒は量無し、乱に及ばず。沽酒市脯は食らわず。薑を撤せずして食らうも、多くは食らわず。公に祭れば肉を宿せず。祭肉は三日を出でず。三日を出ずれば、之を食らわず。食らうに語らず、寝ぬるに言わず。蔬食・菜羮・瓜と雖も、祭るときは必ず斉如たり。
米は精白されたのを好まれ、膾は細切りを好まれる。飯のすえて味の変ったのや、魚のくずれたのや、肉の腐ったのは、決して口にされない。色のわるいもの、匂いのわるいものも口にされない。煮加減のよくないものも口にされない。季節はずれのものは口にされない。庖丁のつかい方が正しくないものは口にされない。ひたし汁がまちがっていれば口にされない。肉の料理がいろいろあっても、主食がたべられないほどには口にされない。ただ酒だけは分量をきめられない。しかし、取乱すほどには飲まれない。店で買った酒や乾肉は口にされない。生姜は残さないで食べられる。大食はされない。君公のお祭りに奉仕していただいた供物の肉は宵越しにならないうちに人にわけられる。家の祭の肉は三日以内に処分し、三日を過ぎると口にされない。口中に食物を入れたままでは話をされない。寝てからは口をきかれない。粗飯や、野菜汁のようなものでも、食事には必ずまずお初穂を捧げられるが、その敬虔そのものである。(下村湖人『現代訳論語』)