◀前 【10.郷党:第04】 次▶入公門。鞠躬如也。如不容。立不中門。行不履閾。過位。色勃如也。足躩如也。其言似不足者。攝齊升堂。鞠躬如也。屏氣似不息者。出。降一等。逞顔色。怡怡如也。没階。趨進。翼如也。復其位。踧踖如也。
公門に入るに、鞠躬如たり。容れられざるがごとし。立つに門に中せず。行くに閾を履まず。位を過ぐるに、色勃如たり、足躩如たり。其の言は足らざる者に似たり。斉を摂げて堂に升るに、鞠躬如たり。気を屏めて息せざる者に似たり。出でて一等を降れば、顔色を逞ちて、怡怡如たり。階を没して趨り進むに、翼如たり。其の位に復れば、踧踖如たり。
宮廷の門をおはいりになる時には、小腰をかがめ、身をちぢめて、あたかも狭くて通れないところを通りぬけるかのような様子になられる。門の中央に立ちどまったり、敷居を踏んだりは決してなされない。門内の玉座の前を通られる時には、君いまさずとも、顔色をひきしめ、足をまげて進まれる。そして堂にいたるまでは、みだりに物をいわれない。堂に上る時には、両手をもって衣の裾をかかげ、小腰をかがめ、息を殺していられるかのように見える。君前を退いて階段を一段下ると、ほっとしたように顔色をやわらげて、にこやかになられる。階段をおりきって小走りなさる時には両袖を翼のようにお張りになる。そしてご自分の席におもどりになると、うやうやしくひかえておられる。(下村湖人『現代訳論語』)