◀前 【09.子罕:第26】 次▶子曰。衣敝縕袍。與衣狐貉者立。而不恥者。其由也與。不忮不求。何用不臧。子路終身誦之。子曰。是道也。何足以臧。
子曰く、敝れたる縕袍を衣、狐貉を衣たる者と立ちて、恥じざる者は、其れ由なるか。忮わず求めず、何を用てか臧からざらん。子路終身之を誦す。子曰く、是の道や、何ぞ以て臧しとするに足らん。
先師がいわれた。――
「やぶれた綿入を着て、上等の毛皮を着ている者とならんでいても、平気でいられるのは由だろうか。詩経に、
有るをねたみて
こころやぶれず
無きを恥じらい
こころまどわず、
よきかなや、
よきかなや。
とあるが、由の顔を見ると私にはこの詩が思い出される」
子路は、先師にそういわれたのがよほどうれしかったとみえて、それ以来、たえずこの詩を口ずさんでいた。すると、先師はいわれた。――
「その程度のことがなんで得意になるねうちがあろう」(下村湖人『現代訳論語』)