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子曰。衣敝縕袍。與衣狐貉者立。而不恥者。其由也與。不忮不求。何用不臧。子路終身誦之。子曰。是道也。何足以臧。
のたまわく、やぶれたる縕袍うんぽうかくたるものちて、じざるものは、ゆうなるか。そこなわずもとめず、なにもってかからざらん。子路しろしゅうしんこれしょうす。のたまわく、みちや、なんもっしとするにらん。
先師がいわれた。――
「やぶれた綿入を着て、上等の毛皮を着ている者とならんでいても、平気でいられるのはゆうだろうか。詩経に、
 有るをねたみて
 こころやぶれず
 無きを恥じらい
 こころまどわず、
 よきかなや、
 よきかなや。
とあるが、由の顔を見ると私にはこの詩が思い出される」
子路は、先師にそういわれたのがよほどうれしかったとみえて、それ以来、たえずこの詩を口ずさんでいた。すると、先師はいわれた。――
「その程度のことがなんで得意になるねうちがあろう」(下村湖人『現代訳論語』)