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子疾病。子路使門人爲臣。病間曰。久矣哉。由之行詐也。無臣而爲有臣。吾誰欺。欺天乎。且予與其死於臣之手也。無寧死於二三子之手乎。且予縦不得大葬。予死於道路乎。
やまいへいなり。子路しろ門人もんじんをしてしんたらしむ。やまいかんなるときいわく、ひさしいかな、ゆういつわりをおこなうや。しんくしてしんりとす。われたれをかあざむかん。てんあざむかんや。われしんてんせんよりは、無寧むしろさんせんか。われたと大葬たいそうざるも、われ道路どうろせんや。
先師のご病気が重くなった時、子路は、いざという場合のことを考慮して、門人たちが臣下の礼をとって葬儀をとり行なうように手はずをきめていた。その後、病気がいくらか軽くなった時、先師はそのことを知られて、子路にいわれた。――
ゆうよ、お前のこしらえごとも、今にはじまったことではないが、困ったものだ。臣下のない者があるように見せかけて、いったいだれをだまそうとするのだ。天を欺こうとでもいうのか。それに第一、私は、臣下の手で葬ってもらうより、むしろ二、三人の門人の手で葬ってもらいたいと思っているのだ。堂々たる葬儀をしてもらわなくても、まさか道ばたでのたれ死したことにもなるまいではないか」(下村湖人『現代訳論語』)