◀前 【08.泰伯:第20】 次▶舜有臣五人。而天下治。武王曰。予有亂臣十人。孔子曰。才難。不其然乎。唐虞之際。於斯爲盛。有婦人焉。九人而已。三分天下有其二。以服事殷。周之徳。可謂至徳也已矣。
舜に臣五人有り、天下治まる。武王曰く、予に乱臣十人有り。孔子曰く、才難しと。其れ然らずや。唐虞の際、斯に於いて盛んなりと為す。婦人有り、九人のみ。天下を三分して其の二を有ち、以て殷に服事す。周の徳は、至徳と謂うべきのみ。
舜帝には五人の重臣があって天下が治まった。周の武王は、自分には乱を治める重臣が十人あるといった。それに関連して先師がいわれた。――
「人材は得がたいという言葉があるが、それは真実だ。唐・虞の時代をのぞいて、それ以後では、周が最も人材に富んだ時代であるが、それでも十人に過ぎず、しかもその十人のうち一人は婦人で、男子の賢臣はわずかに九人にすぎなかった」
またいわれた。――
「しかし、わずかの人材でも、その有る無しでは大変なちがいである。周の文王は天下を三分してその二を支配下におさめていられたが、それでも殷に臣事して秩序をやぶられなかった。文王時代の周の徳は至徳というべきであろう」(下村湖人『現代訳論語』)