◀前 【08.泰伯:第04】 次▶曾子有疾。孟敬子問之。曾子言曰。鳥之將死。其鳴也哀。人之將死。其言也善。君子所貴乎道者三。動容貌。斯遠暴慢矣。正顏色。斯近信矣。出辭氣。斯遠鄙倍矣。籩豆之事。則有司存。
曾子、疾有り。孟敬子之を問う。曾子言いて曰く、鳥の将に死なんとするや、其の鳴くや哀し。人の将に死なんとするや、其の言うや善し。君子の道に貴ぶ所の者三あり。容貌を動かしては、斯に暴慢に遠ざかる。顔色を正しては、斯に信に近づく。辞気を出しては、斯に鄙倍に遠ざかる。籩豆の事は、則ち有司存す。
曾先生が病床にあられた時、大夫の孟敬子が見舞に行った。すると、曾先生がいわれた。――
「鳥は死ぬまえに悲しげな声で鳴き、人は死ぬまえに善言を吐く、と申します。これから私の申し上げますことは、私の最後の言葉でございますから、よくおきき下さい。およそ為政家が自分の道として大切にしなければならないことが三つあります。その第一は態度をつつしんで粗暴怠慢にならないこと、その第二は顔色を正しくして信実の気持があふれること、その第三は、言葉を丁重にして野卑不合理にならないこと、これであります。祭典のお供物台の並べ方などのこまかな技術上のことは、それぞれ係の役人がおりますし、一々お気にかけられなくともよいことでございます」(下村湖人『現代訳論語』)