◀前 【08.泰伯:第03】 次▶曾子有疾。召門弟子曰。啓予足。啓予手。詩云。戰戰兢兢。如臨深淵。如履薄冰。而今而後。吾知免夫。小子。
曾子、疾有り。門弟子を召して曰く、予が足を啓け、予が手を啓け。詩に云う、戦戦兢兢として、深淵に臨むがごとく、薄冰を履むがごとしと。而今よりして後、吾免るるを知るかな、小子。
曾先生が病気の時に、門人たちを枕元に呼んでいわれた。――
「私の足を出して見るがいい。私の手を出して見るがいい。詩経に、
深淵にのぞむごと、
おののくこころ。
うす氷ふむがごと、
つつしむこころ。
とあるが、もう私も安心だ。永い間、おそれつつしんで、この身をけがさないように、どうやら護りおおせてきたが、これで死ねば、もうその心労もなくなるだろう。ありがたいことだ。そうではないかね、みんな」(下村湖人『現代訳論語』)