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曾子有疾。召門弟子曰。啓予足。啓予手。詩云。戰戰兢兢。如臨深淵。如履薄冰。而今而後。吾知免夫。小子。
そうやまいり。門弟もんていしていわく、あしひらけ、ひらけ。う、戦戦せんせん兢兢きょうきょうとして、深淵しんえんのぞむがごとく、はくひょうむがごとしと。而今いまよりしてのちわれまぬがるるをるかな、しょう
曾先生が病気の時に、門人たちを枕元に呼んでいわれた。――
「私の足を出して見るがいい。私の手を出して見るがいい。詩経に、
深淵ふかぶちにのぞむごと、
おののくこころ。
うす氷ふむがごと、
つつしむこころ。
とあるが、もう私も安心だ。永い間、おそれつつしんで、この身をけがさないように、どうやら護りおおせてきたが、これで死ねば、もうその心労もなくなるだろう。ありがたいことだ。そうではないかね、みんな」(下村湖人『現代訳論語』)