◀前 【07.述而:第30】 次▶
陳司敗問。昭公知禮乎。孔子曰。知禮。孔子退。揖巫馬期而進之曰。吾聞君子不黨。君子亦黨乎。君取於呉。爲同姓。謂之呉孟子。君而知禮。孰不知禮。巫馬期以告。子曰。丘也幸。苟有過。人必知之。
ちんはいう、昭公しょうこうれいれるか。こうのたまわく、れいれり。こう退しりぞく。巫馬期ふばきゆうしてこれすすめていわく、われく、くんとうせず、と。くんとうするか。きみめとる。同姓どうせいたり。これ呉孟子ごもうしう。きみにしてれいらば、たれれいらざらん、と。巫馬期ふばきもっぐ。のたまわく、きゅうさいわいなり。いやしくもあやまれば、ひとかならこれる、と。
陳のはいがたずねた。――
昭公しょうこうは礼を知っておられましょうか」
先師がこたえられた。――
「知っておられます」
先師はそれだけいって退かれた。そのあと司敗は巫馬期ふばき会釈えしゃくし、彼を自分の身近かに招いていった。――
「私は、君子というものは仲間ぼめはしないものだと聞いていますが、やはり君子にもそれがありましょうか。と申しますのは、昭公はからきさきを迎えられ、その方がご自分と同姓なために、ごまかして呉孟子ごもうしと呼んでおられるのです。もしそれでも昭公が礼を知った方だといえますなら、世の中に誰か礼を知らないものがありましょう」
巫馬期があとでそのことを先師に告げると、先師はいわれた。――
「私は幸福だ。少しでも過ちがあると、人は必ずそれに気づいてくれる」(下村湖人『現代訳論語』)