◀前 【07.述而:第14】 次▶冉有曰。夫子爲衞君乎。子貢曰。諾。吾將問之。入曰。伯夷叔齊。何人也。曰。古之賢人也。曰。怨乎。曰。求仁而得仁。又何怨。出曰。夫子不爲也。
冉有曰く、夫子は衛の君を為けんか。子貢曰く、諾。吾将に之を問わんとす、と。入りて曰く、伯夷、叔斉は何人ぞや。曰く、古の賢人なり。曰く、怨みたるか。曰く、仁を求めて仁を得たり。又何をか怨みん。出でて曰く、夫子は為けざるなり。
冉有がいった。――
「先生は衛の君を援けられるだろうか」
子貢がいった。――
「よろしい。私がおたずねしてみよう」
彼は先師のお室に入ってたずねた。――
「伯夷・叔斉はどういう人でございましょう」
先師はこたえられた。――
「古代の賢人だ」
子貢――
「二人は自分たちのやったことを、あとでくやんだのでしょうか」
先師――
「仁を求めて仁を行なうことができたのだから、なんのくやむところがあろう」
子貢は先師のお室からさがって、冉有にいった。――
「先生は衛の君をお援けにはならない」(下村湖人『現代訳論語』)