◀前 【07.述而:第10】 次▶
子謂顏淵曰。用之則行。舍之則藏。唯我與爾有是夫。子路曰。子行三軍則誰與。子曰。暴虎馮河。死而無悔者。吾不與也。必也臨事而懼。好謀而成者也。
顔淵がんえんいていわく、これもちうればすなわおこない、これつればすなわかくる。われなんじとのみるかな。子路しろいわく、三軍さんぐんらば、すなわたれともにせん。のたまわく、ぼうひょうし、してものは、われともにせざるなり。かならずやことのぞみておそれ、はかりごとこのみてさんものなり。
先師が顔淵に向っていわれた。
「用いられれば、その地位において堂々と道を行なうし、用いられなければ、天命に安んじ、退いて静かにひとり道を楽しむ。こういった出処進退ができるのは、まず私とおまえぐらいなものであろう」
すると子路がはたからいった。――
「もし一国の軍隊をひきいて、いざ出陣という場合がありましたら、先生は誰をおつれになりましょうか」
先師はこたえられた。――
素手すでで虎を打とうとしたり、徒歩で大河をわたろうとしたりするような、無謀なことをやって、死ぬことをなんとも思わない人とは、私は事を共にしたくない。私の参謀には、臆病なぐらい用心深く、周到な計画のもとに確信をもって仕事をやりとげて行くような人がほしいものだ」(下村湖人『現代訳論語』)