◀前 【06.雍也:第03】 次▶
子華使於齊。冉子爲其母請粟。子曰。與之釜。請益。曰。與之廋。冉子與之粟五秉。子曰。赤之適齊也。乗肥馬。衣輕裘。吾聞之也。君子周急不繼富。原思爲之宰。與之粟九百。辭。子曰。毋。以與爾鄰里郷黨乎。
子華しかせい使つかいす。ぜんははためぞくう。のたまわく、これあたえよ。さんことをう。いわく、これあたえよ。ぜんこれぞくへいあたう。のたまわく、せきせいくや、肥馬ひばり、軽裘けいきゅうる。われこれく。くんきゅうなるをすくいてめるにがず。原思げんしこれさいたり。これぞく九百きゅうひゃくあたう。す。のたまわく、なかれ。もっなんじ隣里りんりきょうとうあたえんか。
子華しかが先師の使者としてせいに行った。彼の友人のぜん先生が、留守居の母のために飯米を先師に乞うた。先師はいわれた。――
「五、六升もやれば結構だ」
冉先生はそれではあんまりだと思ったので、もう少し増してもらうようにお願いした。すると、先師はいわれた。――
「では、一斗四、五升もやったらいいだろう」
冉先生は、それでも少ないと思ったのか、自分のはからいで七石あまりもやってしまった。先師はそれを知るといわれた。――
せきは斉に行くのに、肥馬に乗り軽い毛衣を着ていたくらいだ。まさか留守宅が飯米にこまることもあるまい。私のきいているところでは、君子は貧しい者にはその不足を補ってやるが、富める者にその富のつぎ足しをしてやるようなことはしないものだそうだ。少し考えるがいい」
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原思げんしが先師の領地の代官になった時に、先師は彼に俸禄米九百を与えられた。原思は多過ぎるといって辞退した。すると先師はいわれた。――
「遠慮しないがいい。もし多過ぎるようだったら、近所の人たちにわけてやってもいいのだから」(下村湖人『現代訳論語』)