◀前 【05.公冶長:第25】 次▶
顏淵季路侍。子曰。盍各言爾志。子路曰。願車馬衣輕裘。與朋友共。敝之而無憾。顏淵曰。願無伐善。無施勞。子路曰。願聞子之志。子曰。老者安之。朋友信之。少者懷之。
顔淵がんえん季路きろす。のたまわく、なん各〻おのおのなんじこころざしわざる。子路しろいわく、ねがわくはしゃ軽裘けいきゅうを、朋友ほうゆうともにし、これやぶりてうらからん。顔淵がんえんいわく、ねがわくはぜんほこることく、ろうほどこすことからん。子路しろいわく、ねがわくはこころざしかん。のたまわく、老者ろうしゃこれやすんじ、朋友ほうゆうこれしんじ、少者しょうしゃこれなつけん。
顔淵がんえん季路きろとが先師のおそばにいたときのこと、先師がいわれた。――
「どうだ、今日は一つ、めいめいの理想といったようなものを語りあってみようではないか」
すると、子路がすぐいった。
「私が馬車に乗り、軽い毛皮の着物が着れるような身分になりました時に、友人とともにそれに乗り、それを着て、かりに友人がそれをいためましても、なんとも思わないようにありたいものだと思います」
顔淵はいった。――
「私は、自分の善事を誇ったり、骨折を吹聴したりするような誘惑にうち克って、自分の為すべきことを、真心こめてやれるようになりたいと、それをひたすら願っております」
しばらくして子路が先師にたずねた。――
「どうか、先生のご理想も承らしていただきたいと思います」
先師はこたえられた。――
「私は、老人たちの心を安らかにしたい。友人とは信をもって交りたい。年少者には親しまれたい、と、ただそれだけを願っているのだ」(下村湖人『現代訳論語』)