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子曰。管仲之器小哉。或曰。管仲儉乎。曰。管氏有三歸。官事不攝。焉得儉。然則管仲知禮乎。曰。邦君樹塞門。管氏亦樹塞門。邦君爲兩君之好。有反坫。管氏亦有反坫。管氏而知禮。孰不知禮。
のたまわく、かんちゅううつわしょうなるかな。あるひといわく、かんちゅうけんなるか。いわく、管氏かんし三帰さんきり。かんことねず。いずくんぞけんなるをん。しからばすなわかんちゅうれいれるか。いわく、邦君ほうくんじゅしてもんふさぐ。管氏かんしじゅしてもんふさぐ。邦君ほうくん両君りょうくんよしみをすに反坫はんてんり。管氏かんし反坫はんてんり。管氏かんしにしてれいらば、たれれいらざらん。
先師がいわれた。――
「管仲は人物が小さい」
するとある人がたずねた。――
「管仲の人物が小さいとおっしゃるのは、つましい人だからでしょうか」
先師がいわれた。――
「つましい? そんなことはない。管仲は三帰台さんきだいというぜいたくな高台を作り、また、家臣をおおぜい使って、決して兼任をさせなかったぐらいだ」
「すると、管仲は礼を心得て、それにとらわれていたとでもいうのでしょうか」
「そうでもない。門内に塀を立てて目かくしにするのは諸侯の邸宅のきまりだが、管仲も大夫の身分でそれを立てた。また、酒宴に反坫はんてんを用いるのは諸侯同士の親睦の場合だが、管仲もまたそれをつかった。それで礼を心得ているといえるなら、誰でも礼を心得ているだろう」(下村湖人『現代訳論語』)