Pの付く言葉
福本容子(経済部)
 この秋、香港に世界中から有力投資家150人が結集した。主催者が一同に尋ねる。
「今アジアで一番、注目している国は?」。約半分が「中国」と答えた。次が「インド」で全体の4分の1。
 問題はこの先。ベトナムとかインドネシアとか続くのだけど、我らが日本が……。選んでくれたのは、たったの2%で、当然ながらビリ。
 まだ世界2位の経済大国なのよ、と言いたくなるけど、もう一つの調査結果に、これじゃあね、と思うから悲しい。
「主要20力国で来年、経済成長を期待できない国は?」
 経済同友会が会員に聞いたところ、イタリアよりロシアよりメキシコよりどこより一番ダメ、が日本だった。
 国を代表する企業のトップたちが一番期待薄だと言ってる国に、外国の人がわざわざ投資したがるはずがない。
「何がいけない、ニッポン?
 世界有数の資産運用会社、KKRの日本法人で社長を務める蓑田秀策さんに聞いてみるとA意外な答えが返ってきた。「パッションが経営トップに足りない」
 パッション?「会社をよくしよう、成長させようと強く思う情熱です」。いくら技術力やチームワークや正確さや戦略があっても、情熱がないと何も始まらないらしい。
 そう言われ、ふと思う。日本列島全体がDの暗示にかかって勝手にカを発揮できずにいる。デフレ、ディプレッション(不況)、ディクライン(下降)、ディクリース(減一少)、ディフィカルティ「(困難)、ついでに、ダメ。
 パッションはP。プログレス(前進)もポジティブもプロスパー(繁栄する)も。日本が必要なのにはPが多い。
来年はPで行こう。Dは、さよなら。
《出典》毎日新聞 (21/12/25) 前頁  次頁