建設リサイクル法が施行
建物の廃材 分別して再利用
 家や建物を壊した廃材をできるだけ再資源化し、ごみを減らそうという法律が5月末から施行されました。「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」です。産業廃棄物の2割を占め、捨て場の不足や、悪質な業者による不法投棄が社会問題になっている建築廃材をどうリサイクルするのか、探ってみました。 (篠島 真哉)

■「ミンチ解体」は禁止 施主への罰金も規定
「建材選び、壊す時を考えて」

 建設リサイクル法は、一定規模以上の工事をする場合、コンクリート、アスファルト、木くずの3種類を必ず現場で分別するよう義務づける。
 住宅の解体ならば延べ床面積80平方㍍以上が対象になり、施主は分別解体の計画を、着工7日前までに都道府県知事らに届け出て、勧告や命令があれぱ従わなければならない。工事ができるのは、建設業の詐可を持つか、解体工事業の登録をした業者だけ。業者が違法行為をすると施主が20万円以下の罰金を科せられることもある。
 平均的な住宅の解体工事はどんな業者にもでき、重機を使って一気にぐちゃぐちゃに壊すことが多かった。ひき肉のようになるということで「ミンチ解体」と呼ばれる。ミンチ解体は工期、人手とも、分別「手壊し」の半分以下で済むが、廃材はすべてごみになってしまい、リサイクルは不可能。建設リサイクル法で、こうした解体はできなくなった。
 全国解体工事業団体連合会の桑原一男専務理事は「解体の仕方はもちろんだが、分別しやすい建材を選ぶなど、家を建てる時から解体のことも考えないと、効率のよいリサイクルは難しい」と指摘する。
 建築ごみの埋め立ては、1㌧あたり数万円かかることから、悪質業者による不法投棄も問題になっている。住宅の建て替えでは、新築を請け負った住宅メーカーが処理業者に発注するのが一般的だが、不法投棄が発覚すると、廃棄物処理法で住宅メーカーも責任を問われ、最高1億円の罰金を科せられる。適正な処理が保証されない解体業者には、たとえ安値でも頼めない」と大手住宅メーカーの営業担当者は話している。

■解体、割高でも手作業で約86%が再資源化

 6月中旬、さいたま市内の区画整理予定地で、会社員横山秀一さん(56)の住宅の解体が始まった。木造2階建て延べ約150平万㍍、築14年。てこ、釘抜き、ハンマーを一体化したような「かじや」という道具を使って、4、5人の職人が手作業で進めていく。
 照明や洗面台などの器具、壁紙や配線、配管などの内装を取り除き、かわら、窓ガラス、サッシ、壁板の石膏ボードを外す。柱や梁も1本ずつ解体。それらは整然と積み上げられ、トラックに積まれてゆく。ほこりや騒音はほとんど出ない。シートで囲ってあり、隣家では洗濯物を干していた。
 「まだまだ使えるんだけどな」。材木を見ながらベテラン職人はそう言うが、中古の材木は70年代以降は買い手がなくなったという。今は主にチップにされ、合板などに再生される。
 塀を崩していた職人が壁の割れ目を指し、「複合建材には手を焼くんだ」。モルタルの中にプラスチックの枠が側め込まれていた。分別できないものはリサイクルできず、ごみになる。
 作業は11日で終わった。重機を使ったのは最後に残った基礎部分のコンクリートの撤去と整地だけ。廃材は約89㌧。図のように処理され、約86%が再資源化できた。
 解体工事費は約190万円。業者から「手壊しで分別解体を徹底するので割高」と説明されたが、横山さんは「まだ長く住める家だったことと、マイホームへの愛着から、せめて生まれ変わってほしいと願い、徹底した分別・再生をする業者を選んだ」と語る。
 「解体よりも新しく造る家にお金をかけたいのが人情ですが、ごみ問題の深刻さをだれもが感じる時代に、基準が値段だけでいいのか、という思いもありました」ともいう。
 業界の調査では、100平方㍍の家をリサイクル率75%で解体する工事費は88万円程度という。

■団地・大学 大規模建築は先行

 大規模な建物を解体する場合、廃材の分別とリサイクルは10年ほど前から広く行われている。
 都市基盤整備公団は93年にコンクリートの団地内リサイクルシステムを導入。金属くず、木くずとともに、ほぼ100%再資源化している。
 01年に東京都三鷹市の団地(4棟190戸)を建て替えた際は内装材も畳、グラスウール、石膏ボードなと9品目に分け、約70%を再資源化した。内装材すべてを「混合廃棄物」にするのに比べ、1戸あたり解体人件費は約3400円増えたが、埋め立てなどにかかる処分費は1700円減った。トータルで大幅なコスト増にならないことから、今年4月からは全面的にこの分別をしている。
 大手ゼネコンの鹿島(東京都港区)もコンクリート、アスファルト、木くずの分別は10年以上前に始めている。6月に終えた東京都内の大学施設の解体では、10品目以上に分別をした。解体に10億円程度かかったこの現場からの廃材は計約6万7千㌧。98%以上を再資源化施設へ回した。
 古い建物にはアスベストなど有害物が含まれていることも多い。同社安全環境部によると、分別を徹底すると人件費や有害物処理費がかさみ、受注競争で苦労することもあるという。だが「有害物対策はコストに換えられない。また、不法投棄などが起こらないよう、廃材の運搬業者、再資源化施鼓、埋め立て処分場に至るまで厳選している。環境への負荷を抑える技術力と安心を提供できれば、解体費用の差への理解は得られる」という。
《出典》朝日新聞 (14/07/08) 前頁  次頁