「落語がRAKUGOとして定着するまで続けます」
英語落語を“輸出”する大島希巳江さん
 「日本は自動車や電気製品をいっぱい輸出してきたけれど、ユーモアの輸出は少なかった」
 98年の米国公演を手始めに、海外で毎年1回、上方の若手落語家らとともに英語で落語を演じる。「笑ってもらえれば、日本人も面白いんだなあと理解してくれると思って」。その体験談を昨年末、『世界を笑わそ!』(研究社)として出版した。
 東京生まれ。高校時代に1年間の米国留学を経験し、米・コロラド州立大ボールダー校に入学した。異文化コミュニケーションを学んで、国際ユーモア学会を知った。
 日本のユーモアを世界に紹介したいと思い、目をつけたのが落語だ。97年、米・オクラホマであった同学会の発表会で、上方の噺家(はなしか)、笑福亭鶴笑(かくしょう)さんに英語の字幕付きで落語をしてもらった。「大受けだった。これで終わってはもったいないと、英語落語ツアーを思いついた」
 鶴笑さんら若手数人や三味線方とのツアーでは、総合司会も務める。このほか翻訳や資金集め、事前交渉なども一手に引き受け、米国内の移動では、15人乗りの車を運転して高速道路を走る。
 現在、明海大(千葉県浦安市)で英語講師をしながら、国際基督教大の大学院で教育学を学ぶ。「英語落語を通じて実社会につながっていることは、物を教える立場の私にとっても大変有益です」
 約300年の時に鍛えられてきた落語の笑いは全世界で通用する、と確信する。いま、5回目となる今年の公演先を物色中だ。(文・写真、上田文世)
《出典》朝日新聞 (14/01/24) 前頁  次頁