福島の築68年木造校舎目黒の幼稚園舎に
園児が移築作業を見守る(来春完成)
 統合のため廃校になり、解体目前だった福島県の小学校の木造校舎が目黒区の幼稚園で復活する。校舎は1933(昭和8)年に建てられたもので、解体してトラック延べ22台で運び、現在再建築中だ。園では「移築ごつこ」と名付け、園児が、校舎のよみがえる姿を見守り続けている。15日には、園舎の上棟式が行われた。校舎は来年4月に復活する予定だ。
 校舎は94年に統合で廃校となった福島県金山町の旧本名小学校のもので、同区祐天寺1丁目の私立平塚幼稚園に移築される。
同園では15日午前に147人の園児たちが参加し、上棟式が行われた。園児のお祝いの踊りが披露されたり、お汁粉がふるまわれたりした。
 同園の平塚通彦園長(59)は、昨年の園児募集で3歳児の応募が多く、教室の配置を考えて新園舎建設を決めた。同園は2900平方㍍の敷地に木造園舎が四つあった。平塚園長は「ほかの園舎と同じように木造にしたい」と思っていた。今年4月には見積もりも出ていたが、設計を担当する卒園生の父親(48)が福島県の古民家解体工事業者から旧本名小の校舎を紹介された。平塚園長たちが校舎を見学し、壊してしまうのはもったいない」と移築を決めた。
 68年前に建った校舎は増築されていたが、建設当初からの部分は500平万㍍弱で、計画していた建物の大きさとほぼ一緒だった。
 町役場に再利用計画書を出し、6月に1万円で譲り受けた。町は取り壊して、跡地に多目的ホールを建設予定だった。取り壊し費用が浮いたが、「こんな建物を持っていくなんて」と不思議顔たったという。移築の話を聞いた地元の卒業生や元職員らは、7月の解体前に「校舎とのお別れ会」を開いた。清掃し、校歌を歌い、東京へ移築する校舎に別れを告げた。15日の上棟式に同町から駆けつけた人もいた。
 同園では、園舎の二つを取り壊し、移築する。解体と運搬の費用だけで約1400万円。解体はほぼ手作業で10人で20日程かかった。運搬も高速道路を使うと高くなるため、一般道路で夜間約6時間かけて運んだ。同園への道路は商店街も近く狭い。4㌧トラツクしか通れないため、延べ22台、約1ヶ月かけて運んだ。
 費用は新築の方が安いが、「取り壊される古い校舎を使い続けることは、決して割高だとは思いません」と平塚園長。同園で一番古い園舎は1949年の開園からのものだ。
 「おもしろいものは何でも子供たちと見ていきたい」。平塚園長は移築作業を移築ごっこと名付け、クレーンが来た時や棟上げ式など、工事の節目を保育時間に組み込んで、見守っている。
 校舎は2階部分の柱を約1㍍短くし、隣家に面する部分をモルタル造りにする。完成は来年4月予定だが、平塚園長は「3月に卒園する園児らに1日でも新園舎で過ごさせたい」と考えている。
《出典》朝日新聞 (13/12/16) 前頁  次頁