「建築家はマラソンランナー」
村野藤吾賞受賞・建築家 内藤廣さん
 つつましく味わいのある作風で知られる建築家の内藤廣さん(49)が、高知市・五台山に昨年完成した「牧野富太郎記念館」の設計で、第十三回村野藤吾賞を受賞した。
 受賞講演では、「不器用なので時流には合わせられなかったが、その分、自分のものを見つけることができたのかもしれません」と振り返りつつ、「1950年代以降の建築は自己主張を繰り返してきたが、いまは、私を捨てて植物に迫った牧野さんから学んだ方がいい」と語った。記念館でも「建物をいかに山に納めるか」ばかりを考えた、という。
 賞の名にある村野藤吾は、93歳で亡くなるまで人々に愛される精妙な建築を作り続けた人だった。
 「建築家はマラソンランナーみたいなもので、疲れていやになることもあります。でも今回の受賞で、88歳のときに『才能がないと思えは、長生きしたまえ』と語った村野先生に励まされた思いです」
《出典》朝日新聞 (12/06/14) 前頁  次頁