ケナフに「意義あり!」の大学院生
畠 佐代子 さん
五月、全国各地でケナフの種まきが始まる。
「環境にやさしいという名目で自然植生を破壊するのが見過ごせません」
ケナフはアフリカ原産の一年草。ハイビスカスに似た黄色の花を付け、五カ月で四、五㍍まで伸びる。二酸化炭素の吸収が多く、水質を浄化し、紙資源にもなると推進派は意気盛んだ。
「一九九八年八月、新聞に、ケナフの会の記事が出た。そんなに植えて大丈夫かなと気になって…」
大阪市立大大学院で動物社会学を専攻。親指大のカヤネズミを追って河川敷や休耕田に通うから、すみかのヨシやオギをケナフが駆逐しないかと心配だった。
あるケナフの会のホームページを見たが、生態系への影響には全く触れてなかった。インターネット検索ではケナフ関連サイトが千五百件もあり、拾い読みするとどこもいいことずくめ。疑問がふくらんだ。
「それで京都のケナフ交流会(九九年三月)に参加してケナフ協議会の稲垣寛会長に直接疑問をぶつけてみた。生態系への影響は満足に調べてないと分かって、『これはまずいぞ』と確信しました」
生態学者や自然保護関係の仲間にEメールで疑問・意見を伝えた。やはり危機感を持つ人もいて、各地の情報も集まった。十一月、アンチ・ケナフのホームページを立ち上げた。
「もっと一般の人たちにメッセージを伝えたい。ケナフ推進派のホームベージもリンクしてくれました」
淡路花博の会場にケナフが飾られ、各地の学校で育てられ、ブームは冷めそうにない。「無力感?それはありません」。高知県はケナフ普及活動を止め、米国フロリダでケナフが帰化した情報も届いた。
「ケナフを畑に栽培するのに私は反対しません。でも、河川敷などに生えている植物をわざわざ刈り取ってのケナフ植栽だけはやめて欲しい」
《出典》朝日新聞 (12/05/08) 前頁  次頁