つらーい花粉症も撃退できる
湖畔に暮らす
 花粉の季節である。
 ボクは杉花粉どハウスダストにアレルギー反応を示し、鼻水の方は大したことはないのだが、目が狂うほど痒くなる。
 いくら掻いても痒みが治まらないので、いっそのこと眼球を取り出して、メントール系の液体などにジャブジャブ漬けて、ごしごし洗いたい衝動に駆られる。
 五年前のちようど今ごろ、この河口湖に越してきた。長女の転校のことがあり、なるべく学期のキリのいいところで転校させたかったので、春休みを選んでこの地へとやって来た。だが、現在の家は完成しておらず、近くに民家を短期間借りて、しばらくそこで暮らすことになった。
 この民家の庭先には、周囲一㍍はゆうに超える杉の大木があり、この年の花粉の季節にはほとほと閉口したものだ。そして周囲を見回して、山の斜面に林立する杉林を恨めし気に見つめ「ボクはこの地で暮らしていけるのだろうか?」などと不安に思ったものである。
 しかしどういうわけか、翌年から今年まで、初年度のようなひどい花粉に悩むことはなくなった。全くなくなったわけではないのだが、首都圏に暮らしていたころよりは、随分と軽減されていることは確かである。
なぜだろう?
 今の家の周りにも、杉の木はある。というより、杉の木に囲まれて暮らしているようなものだ。
 なにかで読んだのだが、人間の花粉アレルギーというのは、純粋に植物の花粉だけに反応するのではなく、体内に蓄積された、何かの「毒素」が、花粉などに過敏に反応する体質を作り出すという。
 それではその「毒素」とは何か?
 それは車の排ガスなどに含まれる有害物質であったり、我々が幼少のころに摂取した、人工甘味料や着色料などの、化学製品だ。もしかして化学肥料、飼料による農産物畜産物のせいかもしれない。
 わが国の最重要林業樹木である杉は、古来より存在するのに、花粉症などのアレルギーが、近年騒がれているところを見ると、どうもそれらの説は正しい気がする。
 しかしその「毒素」も、ここの暮らしの中で、少しずつではあるが、体内から除去されているような気がするが、本当のところはどうなのだろうか? (木村 東吉)
《出典》朝日新聞 (12/03/16) 前頁  次頁