「授業力」のない教授が大学を崩壊させる
大学教育学会常任理事 安岡 高志さん
 日本の大学の「授業」が面白くないのは、残念ながら「ニッポンの常識」である。
 メード・イン・ジャパンの製品がアメリカ経済を圧していたころ、ニューヨーク・タイムズはこんな記事を載せた。「日本の大学の授業は極めて劣悪である。それに比べてアメリカの大学の教育は世界に冠たるものである。この差は必ず将来、アメリカに逆転勝利をもたらすであろう」
 なぜ、日本の大学の授業は面白くないのか---「大学のタブー」に挑んだ5人の男たちの共著「授業を変えれば大学は変わる」(プレジデント社)が物議をかもしている。
著者の一人で、東海大学理学部教授(化学専攻)。15年前、「自分の授業を学生に評価させる」という画期的な試みを行った。「授業に興味が持てたか」「教師の授業に対する熱意を感じたか」など10項目を5段階で評価させ、「教師の総合評価」も付けさせた。
 「大学大衆化時代では能力にも意欲にも差のある学生が入学してくる。彼らの声に耳を傾けてこそ、意味ある授業改革が実現できるはずです」
 「学生による授業評価」の提唱者として活動を続け、東海大学では1993年から授業評価制度を導入した。学生数が1万人を超える総合大学で全学規模で実施しているのは東海大学だけだが、この提唱活動を通じて大学人からの激しい抵抗に遭った。
「アメリカの大学では授業評価の低い教師は授業を持てなくなる。授業力のない教師を野放しにしておくと、大学崩壊は時間の間題です」
 わが世の春を謳歌してきた大学教授も、ようやく教育業績が問われる時代となった。
《出典》毎日新聞 (11/11/24) 前頁  次頁