マンション業界 在庫に泣く
住宅減税・・・活気有りそうで、なさそうで
進む資産デフレ「買い控え」傾向

新たな住宅減税の導入で、マンション業界に活気が戻ったように見える。しかし同時に、新規物件の値下がりや保有する土地価格の下落による「資産デフレ」が続いており、在庫の増大に悩まされているのが実態だ。また、所得・雇用不安もあって、消費者の買い控え傾向は一気に解消しそうにない。経営の好転は容易ではなく、マンション専業業界の苦境は続いている。
マンションは、土地の仕入れ段階から、顧客に売って投下資金を回収するまで3、4年はかかる。しかし、値下がりが続くうちは「損を出さないうちに、早く販売しなければならない」(三菱地所)。バブル崩壊後は、工場跡地など遊休地活用で参入した企業も多い。「建設や販売は他社に任せられるので、土地さえあれは気軽に参入できる」(住友不動産幹部)からだ。
こうした中でマンション建設最大手の長谷工コーポレーションは開発・分譲部門を縮小し、大量の土地を持たずに済む建設部門に力を入れる。これまで土地購入から販売まで手掛けた結果、グループで約1兆1千億円の有利子負債を抱えてしまった。長谷工のほか、藤和不動産も銀行に債権放棄を求めている。森ビル開発の傘下に入ったアーバンライフ(大阪市)は今月、80億円の債権放棄をしてもらったと発表した。ただし債権放棄案が決まっても株価の低迷が続いている企業は多い。
期末を控えた業界では新規物件の発売ラッシュをかけているが、一方で販売在庫は首都圏で「危険水準」とされる約1万1千戸(昨年末)に上っている。実情はもっと多いといわれる。
分譲最大手の大京は昨年、賃貸に回した1200戸(簿価350億円)を米投資銀行に一括売却した。だが、その売却価格は簿価の約3分の1と見られている。こうした方法も、在庫対策の決定打とはいえない。
土地投資に走らなかった一部の会社を除くと、どこも銀行からの新規融資は滞りがちだ。それでも士地を仕入れ続けないと「3年先の食いぶちがなくなる」。ビル賃貸なども手掛ける大手不動産社長は「売れてももうからない構造が定着した。マンション専業だったらお手上げだ」という。
今の売れ筋は「億ション」と呼ばれる超高額物件と、4000万円以下の格安物件だ。また、買い手市場が続いたため、「新(新築)・近(近い)・大(大規模)」の物件を選ぶ消費者の志向は強まっている。売れ行きや実勢価格は二極化し、値引きなしに完売はしにくい。「手厚い住宅減税が終わる2年先には、消費税引き上げ後にみられたような反動減が怖い」というセールスマンもいる。
《出典》朝日新聞 (11/01/29) 前頁  次頁