ごみあさるカラス、人間に原因
夢を追う(川内博さん)
 首都圏の繁華街や住宅地でごみを食い散らかすカラスたち。小動物だけでなく人間を襲う例もあり、すっかり嫌われ者だ。
 「しかし、カラスが増えたのは人間が安易な方法でごみを出してきたから。それを悪者扱いするのは身勝手」と日本野鳥の会東京支部副支部長の川内博さん(49)は指摘する。
 3年前からカラスの行動に注目し、ごみをあさる姿を観察してきた。生ごみを入れたポリタンクをふたをせずに放置したり、中身がすぐ分かる透明な袋でごみを出す。こうした人間の行動がカラスにえさを提供したという。
 小学生の時、ラジオ番組で野鳥の声を聞いているうちに好きになり、図鑑を先生にして鳥の種類や生態を学んだ。東京都内の大学の農獣医学部に入学すると同時に日本野鳥の会に入会し、公園や植物園で探鳥会を企画した。都内の私立高教諭になってからも、東京の鳥たちの調査を続けている。
 双眼鏡をあまり使わない「肉眼派」。鳥の美しさをめでるのではなく、「野鳥は環境を表現している」という視点から、暮らしぶりや周囲の環境を観察する。
 最近、都内ではキツツキの一種、コゲラが増えている。「昔は薪や炭にするために枯れかけた木はすぐ伐採したが、今は枝などが枯れた木が放置されている。それが彼らのねぐらになる」と説明する。
 野鳥の会東京支部では、今年1年かけ、都内全域でカラスの個体数などを調べる。約200ヵ所にわたる大規模な調査で、カラスがごみに依存していることを示すのが狙いだ。
 「このままではカラスを殺したり、『巣をつぶせ』という事態になりかねない。行政にデータを示し、乱暴な手段をとらずに数を減らす方策を考えたい」【菊地正太郎】
《出典》毎日新聞 (11/01/23) 前頁  次頁