欠陥住宅
「窓」論説委員室から
何千万円も出して人生最大の買い物をしたら、雨漏りがしたり、床が傾いたり、という欠陥住宅の被害が後を絶たない。
日本弁護士連合会が先ごろ全国の主な都市で開いた3度目の「欠陥住宅110番」にも、千件近い相談が寄せられた。日弁連の分析によると、欠陥住宅が生まれるのは、建築基準法が有名無実のザル法になっているせいだという。
年に110万もの建築確認が申請されるのに、自治体の建築主事は約1800人しかいない。だから、法で義務づけられている完成検査は35%程度しかおこなわれていない。
設計通り施工されているかどうか監理し、必要なときには施工業者に注文をつける義務のある建築士も、本来の役割を果たしていない。名義を貸しているだけという場合さえある。
「住宅がより安全になる」をうたい文句のひとつにした建築基準法の改正案が5日、参院で可決され、成立した。
建築主事の不足を補うため、建設省の指定を受けた民間検査機関でも確認や検査ができるようにし、地盤、基礎と工事の節目ごとに中間検査する制度も導入するという。
しかし、利潤を追求する民間機関に本当に公正な検査ができるものかどうか。
中間検査にしても、対象になるのは自治体が指定した工程に限られる。1戸建て住宅やブレハブ住宅については、建築士が書類を提出すれは、実地検査を省略できることになってもいる。抜け穴が大きく、実効があがるかどうか分からない。
「住宅の安全性が阪神大震災で大問題になったので、国民向けに格好をつけただけ、としか考えられない。この改正では欠陥住宅はなくならない」
日弁連でこの問題の部会長をつとめる新里宏二弁護士は厳しくみている。
《出典》朝日新聞 (10/06/13) 前頁  次頁