CO2を地中封じ込め
温暖化防止に有力策(工業技術院試算)
日本が1990年に排出したニ酸化炭素(CO2)の8%分を、国内やその周辺海底の地中に封じ込められるという試算を通産省工業技術院地質調査所(茨城県つくば市)の小出仁主任研究官のグループがまとめた。
昨年の地球温暖化防止京都会議で義務づけられたCO2削減を達成するための、有力な対策になりそうだ。26日から東京で始まる地球惑星科学関連学会で発表する。
地球温暖化の原因となるCO2は、もともと岩石のすきまや地下水に含まれている。このため、研究グループは、火力発電所や工場から排出されたCO2を回収し、井戸を掘って地中に封じ込めることを考えた。
地中の状態を実験室で再現し、地下800㍍に相当する30度、80気圧で、CO2は気体と液体の区別がなくなる超臨界状態となり、体積は地表の300分の1に、水に溶ける量は20~30倍になることが分かった。
石油探査や地質調査の結果から、水を通さない地層に囲まれた安定した地下水があるなど、CO2を封じ込めやすい条件を備えた場所は、日本の陸地と周辺の海域に29ヶ所あることも分かった。
このため、研究グループは空気中のCO2を回収し、圧力ポンプでパイプを通してこれらの場所に送り込めば、炭素に換算して90年に排出したCO2の8%分に当たる約2500万トンを毎年、地中に戻すことができると試算した。CO2は地中の水に溶けて別の物質になるという。回収から封じ込めまでのコストは年間5400億円程度という。
京都会議で日本はCO2など温室効果ガス排出量を90年実績に比べて2008~12年に6%削減することが義務づけられた。1990年のCO2排出量は炭素換算で3億700万トン。これを2億8800万トンまで減らさなければならない計算で、95年(3億3200万トン)からみると、4400万トンの削減が必要になる。地中封じ込めについては、すでにノルウェーが実用化に乗り出している。【田中 泰義】
《出典》毎日新聞 (10/05/23) 前頁  次頁