太陽光発電1kW=100万円 及び 建築基準法改正
みんなのQ&A
クリーン発電
設置費の3分の1補助も
建築基準法改正
検査を民間業者に開放

最近、近所の家で風車が回っているんだ。
「何なの」って聞いたら、風力発電だって。

自宅で風力発電や太陽光発電する人が
増えているんだ。環境を汚さず「資源」枯渇
の心配も少ないことから、「再生可能エネル
ギー」とも呼はれる。通産省によると、国内
の太陽光発電の設備容量は、1992年度に
1.5万㌔ワットだったのが96年度には
5.7万㌔ワット。風力発電も0.3万㌔ワット
から1.4万㌔ワットに増えている

家庭でどれくらい発電できるの?

太陽光発電の場合、出力3-4㌔ワット
タイプをつけれは、4人家族分をほぼまか
なえる。風力発電だと一家族分を発電するに
はかなり大きな設備が必要になる。家庭では
数100ワットの小型が多いね。

夜も太陽光で発電できるの?

夜や天気の悪い日は電力会社の電気を
使い、天気のいい昼間に発電して余った電気
を電力会社に買ってもらう仕組みなんだ。

なるほど。じゃあ費用は?

太陽光発電は今、1㌔ワット当たりお
よそ100万円。4年前は200万円していたんだ
が、メーカーの技術開発と量産効果で年々安
くなっている。風力発電はサイズによって10
万円前後から数10万円と多様だ。

うーん、安くはないね。

いろんな補助制度もある。国は94年
度から住宅へ太陽光発電を設置する人に補助
を行っていて、今は設置費用のおよそ3分の
1を出している。昨年度は約8300件の応
募があった。風力発電は、補助の対象は自治
体なとが行う大きな事業中心だ。

補助を利用すれは採算がとれるの?

300万円で3㌔ワットの太陽光発電を
つけた場合、耐用年数15年で計算すると、
国の補助と自家発電で浮く電気料金を差し引
いても、およそ100万円の「持ち出し」に
なる。でも、国は量産効果などで2000年代
初頭には1㌔ワット当たり40万円に下げた
いという。これなら元が取れる計算だ。

エネルギー問題も解決しそうだね。

そう簡単でもないんだ。国は、太陽
光、風力発電や廃棄物熱、太陽熱利用など環
境への負担が少ない「新エネルギー」の導入
を、2010年度には原油換算で1910㌔
リットルに増やす計画だが、それでも一次
エネルギー総供給の3%を占めるにすぎない。
発電コストも、今の太陽光発電は電力会
社の電気よりも数倍高い。今すぐ火力や原子
力などにとって代わるものではないんだ。

なんだ、あまり効果ないのか。

いや、そんなことはないよ。太陽光や
風力発電を設置した人の多くは、エネルギー
の大切さを知って省エネ生活を始めたと言っ
ている。地球温暖化や化学物質汚染の問題が
深刻化する今、コストや効率だけを基準にし
た生活を選び続けていいのかが問われてい
る。国や企業の努力も強く求められるが、私
たち一人ひとりが生き方を見直すことも大き
な力になる。家庭でのクリーン発電は、そう
した意識変革に一役買うのは間違いないよ。
吉住 琢二(学芸部)


建築基準法改正案が今国会に出ている
らしいけど、住宅が建てやすくなるのかな。
君は一級建築士だから詳しいだろう。

この法律は建物の安全性確認などのお
おもとになるの。日本の建築コストは海外よ
り2、3割高という評判で、その一因は海外
の資材などの使用を阻む建築基準法だ、と米
国などから言われていた。改正は規制緩和の
一環ね。併せて、建築物の完成後の検査など
が行き届かず、「ザル法」と言われる現状を
民間活力も使って改める狙いがある。

「性能規定」を導入するというのが改
正の柱だと聞いたけど。

いまは、例えば柱の太さや壁の厚さな
ど、工法や材料を細かく決める「仕様規定」
なの。それを、「○○㌔の力に耐えられる」
というように、強度や防火性などで一定の基
準を示し、その満たし方は自由な「性能規
定」を中心に据える。

それで、どういう利点があるの。

これまでは屋根と一体で太陽電池を使
いたくても「不燃材」と認められない、といった不具合があったけど、それがなくなる。
条件を満たせば木造大型ドームもできる。輸
入資材を使いやすくなるし、コスト削減がで
きるかもね。設計ももっと自由にできる。

容積率も緩和されると聞いたけど。

容積率は敷地面積に対する建物の延べ
床面積の割谷で、接する道路の幅などをもと
に決まる。細い路地しかない密集地だと、高
い建物は無理ね。新しく建てる場合は例外的
に、表通り側と裏通り側の二つの土地を一つ
のものとみなし、表側の高い容積率を全体に
適用する仕組みがあるだけ。それを今回は、
すでに建物が立つ土地にも新たに認める。

具体的に説明してくれないか。

同じ面積の敷地が二つ並び、そこにた
つ建物の容積率を裏側が200%、表側が
400%とするでしよ。これが一体とみなされ
ると、二つの土地の平均として400%が認
められる。だから、建て増しや改築で、裏の
建物の容積率を400%にしてもいいし、裏
に新たに認められた容積率200%を表に回
し、表の客種率を600%にしてもいい。
うまくいけは都市部の士地の有効利用が進み、
住宅価格が下がることも期待できそうよ。

検査業務を民間に開放するの?

着工前の確認や完成後の検査は、自治
体の「建築主事」だけができるけど、一人当
たり年間600件の仕事がある。人手不足で、
違法建築が野放しになっているといわれる。
改正案では、一定の条件を満たす団体にも業
務を認め、検査を行き渡らせる考えよ。

民間が乗り出すのかな。

すぐには難しいかもしれない。採算を
気にしない役所と違って、民間の検査は割高
になりそうだし、民間側も休日サービスなど
で差別化するところが出てくるかもしれない
わ。確認や検査の結果などは、閲覧できる公
開資料にされる。違法建築の建物を、そうと
知らすに買ったりすると、実際に住んだり、
あとで売るときに困る可能性もあるから、業
者をきちんと選ぶことも必要になるわ。

山本 晃一(経済部)

《出典》朝日新聞 (10/04/28) 前頁  次頁