遠赤外線燻煙処理炉を開発
割れ防ぎ国産材用途拡大に
㈱中村ハウジング(栃木県宇都宮市・中村守利社長)は、国産木材の遠赤外線燻煙(くんえん)処理施設を宇都宮大学森林資源利用学研究室と共同開発。その燻煙処理材を使ったモデルハウスを現在、宇都宮市内に建設している。

遠赤外線を利用した燻煙処理は、宇都宮大学の吉沢伸夫教授や安藤實講師らが研究を進めてきたもので、スギやカラマツの心持ち材を割れや曲がりなく、低コストで乾燥できるという新技術(解説参照)。

同施設で背割りなしの杉角材120本を、平均23%の含水率に乾燥させた実験で、安藤氏らは「木ロ割れおよび干割れについては、120本中3本に3㎜以上の干割れが現れたが、その他はJASの等級区分にふれるようなものは見られなかった」と報告している。

また、同処理材は薬剤浸透性が向上することから、難燃剤を常温・常圧(どぶ漬け)で注入することが可能となり、安藤氏は「今年中に難燃認定も取得する予定」と語る。

中村ハウジングでは今後、クリスタルウッド協会(平成8年7月に安藤氏、中央木材開発らが結成)を通じ、この処理装置を販売していくとし、中村社長は「これまでクレームの原因として敬遠されてきた国産杉材の復興につながれば」と話す。

なお、同材の処理費用は立方㍍あたり1万5千~2万円。同社が建築しているモデルハウス(31坪)では、処理材を約6.5立方㍍使用し、処理費用は12万円。坪あたり約4千円のコストアップだった。問い合わせは同社 TEL:028-621-7587)まで。

遠赤外線燻煙処理
ふく射性の強い遠赤外線を利用する木材乾燥技術。燃焼室および熱処理室内壁面にセラミックスを装着し、遠赤外線の放射量を増加。遠赤外線のふく射効果により、材内温度を均一に短時間に上昇させることができる。
壁孔壁も破壊されるため、透過性が向上。材内の温度と水分の分布が均一になるために、乾燥応力が抑制され、材の損傷が生じない。
栃木県産の樹齢の40~45年生の杉から製材した芯持ち正角(105角X3m)120本を使い、安藤氏らが実験した結果は次のとおり。

①生材の含水率のバラツキは41%~104.5%(平均67.3%)と大きいが、処理後は10.2%~48%(平均23.8%)になった。

②桟積みロットの中心部と外周部に温度差がほとんどなく、仕上がり含水率に差が少なかった。「炉内の上下温度差は8゜C程度」(中村社長)。

③木口割れおよび干割れは、3本に3mm以上の干割れが現れたが、その他はJAS等級区分にふれるものはなかった。
《出典》新建ハウジング (10/03/20) 前頁  次頁